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※※ ― 大きな火 ―
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のぞきこんできた顔の、口と目がめいっぱいにひらかれると、その場にひどい歪みが生じた。
怒りと憎しみと恐怖の重なった乱れで、大きな波が襲いかかるようで、苦しくなる。
すぐにまた暗くなると、混乱のおさまらないこの場の『空気』が、熱をもった。
じわりと、視界があかるくなり、それがあっというまにひろがると、熱くなってきた。
熱は、燃え上がる橙色の火だ。
いや、これだけ大きな『火』はみたことがない。
蝋燭の先にともるそれとは、別のものであるような橙色が、木の壁を覆ってゆく。
おお、あつい
普段はこんな熱さなどかんじたこともないのに。
すぐそばに、大きく上にのびる橙色の火がみえた。
けぶくて、苦しい。
トンボは、どうした?
弟にもらったトンボ。
動かなくなっても大事にとってある。




