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ムシが教えてくれる
そんなわけあるもんですか、って言い返したらにんまりして気味の悪いこと言ってきて
『 あたしはこんなとこに閉じ込められてるけどね、なんでもお見通しなんだよ。 だって、ムシが教えてくれるからさ 』
―――――
「!?むし?」
「ああ。だから、この前の騒ぎも、その女が絡んでいるんじゃないかと」
「なんて女だ?」
立ち上がったトクジのそばに黙ったままのシュンカが立つ。
どうしたのかとみれば、困ったように微笑んだ相手が腕をのばし、こちらの頭を軽くたたいてきた。
「トクジさま、せっかくのいい男がだいなしです」
「・・・・・」
きっと、かなりの殺気をたてていたのだろう。
すっと自分の中の黒いものがひいてゆくのを感じる。




