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カシラになったわけ
付き合いの古いここの連中は、それに関して何も言わずに迎えてくれたが、ただ、口の悪いおランという女が、せっかくとった『徳』とやらを、存分に発揮しろ、と、本人に何の了解も得ずに、色街の『男衆』をあつめた『用心組』をつくり、その頭にトクジを据えてしまった。
元々、それぞれの店には、用心棒と力仕事をうけもつ『男衆』とよばれる男たちが詰めている。
この街にトクジがすみついたのにはいろいろな理由があるのだが、そのきっかけとなったのは、その日遊んでいた店で、将軍付の軍人がおこした騒ぎを、あっと言う間に片付けたという出来事だ。
トクジの腕をみこんだ店の女主人がすぐに口説き、店の『男衆』として、ひきいれたのだ。
だが当然ながら、腕はたつが昼寝が大好きという男を、店に元からいた他の男たちは快くは迎えなかった。
数日あとの夜中には、トクジの寝起きする部屋で、『大蛇』が出たという騒ぎがおこった。




