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どの女にも
「っと、そんな殺気ばしるなって」
「コウド、てめえ、シュンカの『力』の話し、もらしてんのか!?」
「まさか!おれがするわけなかろう? ―― シュンカの『力』のほんとの話しを、知っているのはここじゃ、おれたちだけのはずだったんだが・・・」
コウドが庭をみやり、トクさん《境》を張ったのか?と確認した。
うなずく男を、やはり気の付く男はちがうわな、とほめてから、「女が寄ってくるわけだ」と付け足す。
「 ―― あんたは、どの店のどの女にも優しいから、女どもが勘違いするのだ」
「はあ?いまさら何言ってやがんだ?」
トクジはコウドとシュンカの間にどすりと座り込む。
いまはもう、どの店の女とも馴染みにならないのは、誰もが知っている。
いちおう『坊主』なので種は残せないし、残そうとも思わない。
入り浸るのは店主の年増の女のところだ。




