誓い
「・・・手が震えたよ。 ―― 刃物をとりあげた親父殿が、おれに着物をくれた。お袋殿が、食べ物を渡してくれて、この街へ行くようにすすめてくれた。おれは、・・・こともあろうに、逃げたんだ。あんたの里にどんなひどい軍人が来て、何をしようとしてるか知ってたから、さっさとそこを後にしたかった。 自分の自由を優先して飛び出した。 ほんとうは、・・・本当なら、軍に戻って、あんたたち親子はどこかへ逃げたって、報告をすべきだった。 そうしたら、里はあんなにひどいことにならなかったかもしれないし、あんたたちもっ、―――― 」
シュンカに手をとられたコウドが、驚いて声をつまらせるのをトクジは見る。
「ありがとうございます。おれの知らない父と母の話をしてくれて。―― こうして、コウドさまに会えたこと、二人とも喜んでくれていると思います。おれも、 ―― お会いできて、よかった」
にっこりと、とった手を握り微笑む相手を、コウドは間抜けな顔でしばらく見つめ、おかしな声をもらしたかと思うと、すごい勢いで手をふりはらってあとずさり、畳に額をこすりつけ、震える大声で宣言した。
「 っこ、このコウド、この先の命、シュンカ殿に捧げることを誓い申す! なにがあろうとも、どこにいようとも、かけつけてお守りする!」




