偵察
助けを求めるようにトクジを見るのに気付いたコウドが、あわてて言った。
「違うのです。・・おれは、・・・―― あの、 ホムラが、あんたのことを聞きつけて、真っ先に偵察に行かされたのが、このおれなんだ」
緊張よりも、後悔がさきだち、ふだんの言葉遣いになった。
「ていさつ?」
聞き返され、うなずいた男は意を決したようにシュンカに膝をすすめると、がばりと伏して謝った。
「すまない。おれのせいだ。―― 偵察に行ったとき、あんたの親父殿に、すぐに軍人だと見破られて、おれは隠してた刃物をぬいたが、とうていかなう相手じゃなかった。 だが、親父殿は言ってくれた」
そんなにいい腕をしていて、なぜ、西の軍人などしているんだ?
「 ―― おれだって、あのホムラのことは嫌いだった。やり方は反吐がでるほど汚いし、余分な殺傷や破壊ばかりする。 子どもや女も関係なしだ。だが、―― 西の軍隊は、あの男のおかげで最強とうたわれていたし、ホムラの支配は絶対だった。軍を抜けたいといいだすやつは、荷物をのこしたまま次の日には行方不明だ。・・・おれは、あんたのお袋殿を盾にとって、シュンカをここに連れて来いって脅したんだ。正体がばれたんだから、何か、《手土産》を持って帰らないといけないと焦った。 そうしたら・・・お袋殿は、おれの手をとって自分の胸に刃物をむけた」
かわいそうに。あなた、―― 逃げられないのね




