コウド
離れたところに黙って座っていたシュンカの緊張が伝わる。
ふすまのむこうもだ。
はいれと言えば、ひと呼吸あってからふすまがひらいた。
歳はトクジより少し若いはずだ。
元は軍人だったという男衆は他にもいるが、体も腕も群をぬき、大堀の騒動の時も、この前の蟲の騒ぎの時も、トクジのすぐ後につく。
「コウドと申しまする」
深く頭を下げた男は顔をあげ、トクジに礼をこめた眼をむけると、すぐにシュンカを見つめた。
短く刈った茶色い髪と、優しげな顔のつくりで、かなり若くみえる。
「あ。大堀でトクジさまと」
見合った顔に思い当たったシュンカも頭をさげ、あのときはみなさんありがとうございました、と礼を口にするのに、「似ておられる」とコウドは目をほそめた。
え?と小首をかしげるシュンカに、なんとも苦しげな顔をした男は言った。
「 これは失礼した。 あまりに、 ―― お母上様に似ておられるので」
「 は、母を、知って、らっしゃる・・のですか・・・?」
シュンカが一気に身を固くする。




