詰所に
―― その七 ようやく会えた ――
むこうから、自分をよぶ影をみて、しばし立ちつくす。
陽を背負って立つ、その姿勢とか、様子とか、声のかけかたが、―― 。
「おい、どうしたシュンカ」
「あ、いえ」
寄ってきたトクジが眉を寄せて笑う。
そのまま大きな手がのびてきて肩をとられて並んで歩き出す。
「さっきな、おランのとこで遊んでたテツが、神官の仕事で呼ばれてったぜ」
「そうですか。 では、おれはそろそろ帰ります」
二人だけで伍の宮にいるのがさびしいものか、先だて、セイテツが、そろそろおまえも下界のこの街に泊まってもいいだろう、などと突然言い出し、すでにシュンカも何度かこの街で朝をむかえている。
ふたりそろって一晩、気心の知れたおランの店に世話になるのだが、シュンカはさんざん抵抗して、女とは寝ずに、おランが生活する奥の座敷に、泊めてもらっている。
今日も、泊まる気満々で来ていた絵師は、本職のほうで街をはなれてしまった。
一人でおランのところに泊めてもらう勇気はないので、帰ろうと思ったのだ。
ところが、思いもかけず、トクジに声をかけられた。
「 ―― なら、おれたちの詰所に泊まるか?」
「え?・・いいんですか?でも・・・」
たしかに男衆とは、かなりなじみになってはきたが、おかしな噂もひろまっている。
これ以上トクジに迷惑はかけたくない。




