※※ ― ばあさまの孫 ―
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ばあさまは産婆をやっていた。
神官とも知り合いで、なんでも、それ相応の『力』があるのだという。
「 わっしの孫だでな。 おまんにもきっと『力』ばあるんじゃ 」
かわいがってくれたばあさまがよく言った。
その『力』が強ければ、神官にもなれるだろうし、『徳』をとって坊主にもなれるだろうと。
「 ばあさま、なら兄やは? 兄やにも、あるじゃろう? 」
聞いたとたん、怒鳴られた。
何を言うか!と、いままでに聞いたこともない声と顔で怒るばあさまが、ひどくおそろしくて、泣き出してしまう。
「 泣くな。こらえろ。 ―― いいか、忘れんなよ。 ・・・兄やのことは、わっしとおまんだけの秘密じゃ。家の中で口にするな。 ―― けっして、誰にも話すな。 父さん母さんにも話すなよ」
しわしわの手がこちらの両手をしっかりとにぎり、いいきかされた。
「・・・わかった。もお、いわん・・・」
「それでええ。 兄やを守れるのは、わっしとおまんしかおらんのじゃ。 ほかの誰かに知られでもしたら、ムシば殺すように、 ―― ひねられよるぞ」
ムシ
「・・・『ムシ』・・・?」
「 なんとも、思っとらんのじゃ、・・・なんともじゃ」
先ほどの、こわい顔が嘘のように、ばあさまは小さくなって泣き出した。
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