なにか知ってる
「《トンボ》が、われらの空に現れるようになって、まずは天宮の《大臣》たちにでも、知らせにゆくかと考えていたら、いきなり水盆に、《蛙》が出おった」
しゃべる蟲を、まず高山へと持ちゆくように
「 こうしてきてみれば、なにやらひどい臭気におおわれ、においの元はどこぞへ逐電。 まあ、《ミカド》が、おまえらの為をおもってのことなど、するわけもないからな。 ただ単に、おもしろがってのことだろうが」
ここで、スザクが「ああ」と声をだした。
ドウアンも、「そうか」と何か思い出したように顔をあげる。
コウアンだけがわからぬ顔なのに、ジュフクさまがスザクに問うただろう、とドウアンが説明した。
おまえ、ムシを助けたことがあるか
「おお、そうだ。たしかにそう聞かれた。・・とすると、ジュフクさまはなにか知っておられるのか?」
そりゃじじいに聞きゃわかるだろう、というスザクに、口を慎めと注意したコウアンが、懐におさめた蟲の死骸の砂を、確かめるようにおさえ、立ち上がる。




