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おとこまえ
シュンカの『気』を、けどられないよう、街全体を囲うような《術》もあるが、それをするとこの街のいやな『気』も溜まりこんでしまう。
「トクジさま?」
「っお、おうよ」
鼻先にあったきれいな顔に一瞬本気でとまどった。
こちらを、すみずみまで信頼したきれいな眼で見つめられると、そんなに信用できる男じゃねえぜ、と言い訳のようなことをくちにしたくなる。
かえりましょう、と手をひかれる。
そうだな、としたがう。
この子は、まわりのすべての人間に同じような優しさをみせる。
この子にとって、周りの人がすべて、その優しさをわける対象であって、そのとびぬけた上にいるのが、 ―― スザクなのだ。
「 ―― まあ、スザクが戻ってくるまで、しっかり守るか」
「え?なんですか?」
聞き逃したシュンカがふりかえる。
「おれが、男前だ、ってはなしよ」
「トクジさまは、とっても男前ですよ」
「そうか? これ以上、惚れるなよ」
つながった手をゆすりながら、そばをとびさったトンボを見送った。




