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境は越えた
《四の宮の大臣》に、忠告をうけたその『気』の量は、確かに尋常ではない。
少しずつ教えているが、おのれの『気』を完全に扱うまでにはまだしばらくかかりそうだ。
そういえば、黒森の黒鹿を人型にしたという話を思い出す。
シュンカが動けば『気』も動く。
空をも震わせていたという話しも、すんなりと信じられた。
――― あのムシは、シュンカの『気』に寄ってきたんだろ
いまだに、その《術》の正体もわからないが、だれかのかけた『まじない』だ。
――― この前まで入れなかった境を越えてきやがった
いつもずっと、あとをついてくるだけだったあの無邪気な気配が、急にこれほど大きく禍々しいものに変わるなどとは腹立たしい。
あの、嫌な感じは当たってしまった。




