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おとぎばなし ― 蟲 共に 還りし あの ―  作者: ぽすしち
やりすぎの女

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56/193

『天守』さま



 取り囲む坊主たちに、いきなり抱き付こうとして逃げられては笑う女は、からかうような視線をめぐらせ、肩まで抜いて身に着けた薄布の朱色の着物を、いっそう引き下げた。


 豊満な乳房の張りが半分出され、周りの坊主たちが、おびえたように身をひく。




「あらあ~、ドウアンさまもいらしたのね~」


 入り口に現れた男をみて、女は着物の裾をひきあげ、白い脚をみせながら石段をのぼってきた。



「お、お、おんな!こ、ここは、た、高山ぞ!」


 女を入れまいと立ちはだかった従者の頭を、コウアンは後ろからはたき、どけ、と命じてから、

 ―― いきなり、膝を折った。


 両の拳も石の床につけ、敬服の姿勢をとる男を従者たちはあっけにとられ眺めていると、ドウアンも、コウアンの隣に膝をつく。



 わけがわからずに動けない他の坊主どもにむかい、コウアンが怒鳴った。



      「何をしておる!このおかたは『天守』さまぞ!」




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