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騒ぎ
三人がいるのは、コウアンの居房である高台の離れだったのだが、下の道から騒ぎが近づく。
ドウアンが立ち上がり、コウアンが「何事だ」と隣室の従者に問う。
うまく説明できない従者は、開け放したままの扉のむこうを、 たださした。
なにか、むらがるような人の《かたまり》が、さわぎながら徐々にこちらにむかってくる。
むらがっているとみえたのは、なにかを『止めよう』と、動いたり戸惑ったりする、幾人もの坊主たちなのだが、止められずにいるようで、 ―― まとまって、こちらへむかってくる。
スザクがちっと舌を打った。
騒ぎながら石段をのぼる一団の中に、鮮やかな朱色が見えかくれする。
ひらいた房の扉へ、先に駆け上ってきた従者のひとりが、言葉をもつれさせ倒れこんだ。
「こ、コウアンさま!お、おな、おなごが!」
「あ?『おなご』?」
すると、すぐそこまできた坊主のかたまりの中から、「コウアンさま~」と媚びをのせた女の声がした。




