《解術》
「 ―― ギョウトクは、元々『力』がそれほど強くはない」
なにかを含んだような断言のあとをドウアンがひきとる。
「《解術》などは、ほかの術の何倍も『力』を必要とするものだ。 ギョウトクは昔から、呪術のほうを得意とする男でな。 それを、己の独特の解釈でもって、より『効力』のあるものへと変えてつかうことを、目的に修行しているところがあった。 ・・・おれも、何度かいさめたことがある。やつは、それを『ひがみ』ととったようだがな」
「そういう奴だわ。 ―― しかしな、『解術』などは、《術をかけられた者》しか、必要とせんだろう。 ―― 問題は、『人体』と、『清水』か・・・」
コウアンが火傷を負った左の甲をなで、口をまげた。
『人体』も、術をかけられた者を苦しみから救うのが前提の《経》ではあるが、《経》を《綴る》ことができるほどの坊主がとなえれば、 ―― 苦しみを、与えることもできる《経》となる。
「 『清水』も一緒となれば、それそうおうの《術》も、おこなえよう」
ドウアンの言葉にコウアンもうなずいたそのとき、 ―― この場所では、きいたこともない騒がしい声が響いてきた。




