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持ち出された経
今度の『ネズミとり』を行う前に、ミツ房にある経そしらべてみたところ、いくつかが、ただの白い紙とかえられているのをみつけたのだと、くやしげにコウアンが白湯をのみほした。
ドウアンが、スザクに《貸し出す》と言った《経典》ともなれば、古いのはもちろん、ひどく貴重なものであるのが知れる。
経をもちだしている《ねずみ》なら、かならずかかるとふんで、わざと食堂で口にしたのだ。
しかしたしか、とドウアンがコウアンをみる。
「 ―― 持ち出された経の写しは、術の『返し』や『解術』のものがほとんどで、あとは『人体』にかんするものだったか」
それをきいたスザクが腕をくんで頭をかたむけた。
「ギョウトクがつかうってことか? そりゃ今さらな感じだな。 あれだけの術をあやつるってのに」
これにコウアンが大きく息をついてみせた。




