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うわあ・・・
「―― おーい、トクさーん」
その呼び声がおそるおそる近づき、うわあ、と目にしたものに悲鳴をあげた。
「・・・っちっくしょ、なんだってんだよ。 おいテツ、早く塩まけよ!」
まだ体に、トンボの脚をつけたままのトクジは、自分で倒したカマキリの死骸の上に落ちることができた。
だが、落下の衝撃で、トクジにおしつぶされたカマキリの腹はやぶれ、おまけに氷の塊を受けていっしょに落ちたトンボの体も、けっきょくトクジに押しつぶされ、 ―― 結果、巨大な蟲の体から飛び出した、黄色と緑色の、べたべたとしたものにまみれたトクジに、 ―― 手を差し伸べる男衆は、だれもいなかった。
セイテツさえも、少し離れたところから塩を投げつける。
ところが、塩できよめてもその状況に何の変化もおこらなかった。




