ツチグモ
どんっ!
いきなり出でた巨大な氷塊が、地面に突き刺さり、ぐああああああ、と人のおたけびのようなものが響くと、土の中から黒いかたまりが現れた。
平たい体の両側に何本もの脚をもつ『ツチグモ』は、氷の衝撃で体の真ん中が、ぐしゃり、とへこみ、赤黒い血をはきだすと、「オノレ・・・」と人の声と顔で、恨みを連ねる。
「ああ、今回のツチグモは男だから、すんなり終えられそうだよ」
ツチグモの髭におおわれた顔をみながらセイテツは微笑んだ。
いいから早く仕事しろ、と命じたトクジは、とんでカマキリの鎌をよけると、とりついてそのままよじのぼり、首にまたがる。
ぐるり、と虫の頭が回る前に、とっととそれを斬り落としたところで、セイテツが細かい氷の刃で、『ツチグモ』の、眉間を割るのをみとどけた。
とたん、
かまえるより先に、体が宙に浮いていた。
「トクさん!!」
叫ぶセイテツが一気に小さくなり、さきほどまで、またがっていた、頭のないカマキリの体が、辻の中に倒れるのを下に見る。




