はいれなかったモノ
「辻に入ってこられなかった?」
「ああ。 ありゃアきっと、あそこの《術》に、入れなかったんだ」
「だとしたら、 それほどの『力』じゃないな」
トクジを連れて帰ったシュンカはすぐに、参の宮に呼ばれ、伍の宮に残ったセイテツとトクジはゆっくりと酒をなめながら、シュンカについてくる《モノ》の話をした。
「 ―― 前に、スザクが、トクさんとこに逃げ込んできたときのヤツとは、違うってことか?」
「ああ、あんときゃシュンカのこともあって、おれがいた店に駆け込んだんだろうが、・・・あれはもっと、はっきりとした悪いモンだった。 それに、あきらめもよかったしな。ありゃあ、《術者》の『力』がつえエから、半分からかってたようなもんだ。 だがな、今、シュンカについてきてるのはよ、―― 」
そこで盃を口につけ、感じたことを思いだし、すこし嫌な気分になる。
「 ―― なんだか、ほら、・・・子どもがよ、 ・・トンボとかチョウチョウをみつけて、あとを追うだろう? それに似たような・・・」
猪口をみつめてこたえるトクジの様子に、セイテツはためらうように、また子どもか?と聞く。
いや、とはっきりこたえた男は酒を干し、違うんだよなあ、と口ごもる。




