軒下(のきした)
いやな表現あり。ご注意を
「 坊主の『徳』を返させるには、それなりの理由が必要だろう?それに、ジュフク殿の『認め』が必要だ。 ―― ギョウトクという男はな、どこにも跡を残しておらん」
コウセンの言葉に、そりゃまた、とトクジは考え込む。
「 ・・・じじいの側用人は、なにしてる? たしか、口うるさいのが三人いたはずだ」
これにすぐ、「いなくなった」と返したコウセンの顔を、しばらくながめることになった。
「・・・・・嘘だろう?あいつらは、じじいに自分の人生捧げて生きるのが、楽しくてしかたねえような坊主だぜ? それに、『力』だって、並大抵のもんじゃねえ」
「いなくなったのはそのうちの一人だ。 なんでも、中山にあるとかいう偽坊主の修行場を閉めさせるための書状を手に向かったのだが、次の日に、 ―― チゴと心中してるのが見つかった」
「はああ? ―― まさか、チゴ茶屋が連なる海に、とびこんでとか言うなよ」
「海の中ではなく、茶屋の軒下だ」
『チゴ茶屋』があるのは、色街からは離れた、海に面した山の上だった。
立ち並んだ、豪華で大げさな建物の海側は、断崖絶壁。
その崖に、いかに軒を出して建てられているかが店の沽券を表すかのようで、どの店も、競うように崖の方へと部屋を建て増していた。
その、はりだした軒下に、ぶらさがった状態で、見つかった。




