しかたねえなあ
先にむこうが、ふん、と息をついた。
「 ―― おまえは、シュンカを呼んで、あそこにいる人間どもに、その『気』をわけようと思ってるのだな?」
「『わける』ってほどでもねえだろ。 ただ、普通に『力』もねえような者は、あの子からあふれた『気』に触れただけで、心も身体もやすまるんだ。 そんな恩恵を与えられるってのを、シュンカ自身が知ってたら、もっと早くに、そうしてたんじゃねえのかい?」
「・・・・」
「まわりのあんたたちが、どういう事情で、あの子のそういう『力』になるべく触れないようにしてるのかは、テツにきいて知ってる。 だが、あの『気』をつかわねえっていうのは、坊主であるおれにいわせりゃ、 ―― あんたらの『欲』だ」
「 ほう。 わかってるような口をきくじゃねえか」
「ああ、きかせてもらうさ。 こっちだって、それなりの腹きめてもちかけた話だ。 おれだって、それなりのことをしなきゃならねえのは、わかってる」
ぐっと目に力をこめて言えば、ようやく相手の気配がやわらいだ。
懐から手をだして、しかたねえなあ、と髭をかいた男は椅子に背をつけ微笑んだ。
「 ・・・まあ、おまえのことは信用している。 サモンも口添えしてくれたから、他の大臣もわかってることだ。 ―― だがなあ、なによりも卦相でもって、よくねえもんが出てるんでなあ・・・」
天宮の大臣たちが、三月先の相をみるのは知っている。
それがよく当たることも承知している。




