《ギョウトク》の弔いは
この男になら、伝えていいかとトクジは思う。
「 ―― あのなあ・・・あの、ススキ野原、ぜんぶ燃えたらしい」
「え!?いつ? なんでまた?里人のしわざか?」
急に酒の味が落ちたように顔をしかめ、しかしならば、オフクさんたちを動かしておいてよかったな、と安堵した笑みをみせる。
「 あれだけ、里から離れた山の番小屋ならば、火事の火も届かないだろう。《ギョウトク》の弔いも、トクさんがやってやったのだから心配もないしな」
「―― やってねえよ」
「・・・なに? だってあの次の日、オフクさんとこ、行ってくるって・・・」
トクジは傷の消えた頬をかく。
行ったには行ったのだ。
だがそこに、ギョウトクの骸はすでになかった。
「《ギョウトク》が死んだ夜にな、 骸の入ってた箱に、すがったまま寝ちまったオフクを気にかけて起きてた猟師のじいさんがよ、小屋の外からうたわれる《経》を、きいたらしい ―― 」
ちょうど良いと思った猟師が、《ギョウトク》に、経をうたってもらおうと外へ出れば、誰もいない。




