ショウトク やさしい おとうと
そこにいたすべての者に、その声がきこえた。
ショウトク やさしい
シュンカ ショウトク いたい なおった
ショウトク おとうと
ショウトク おこってない
ショウトク やさしい おとうと
いたい なおった いたい なおった
ギョウトク ショウトク の にいや
ショウトク ――― すまんな
ギョウトク にいや で すまんな
ショウトク やさしい
おと うと
『声』とともに、うっすらと感じ取れていた『気』が、そこでぷつりととぎれた。
ひくい獣のようなうめき声と共に《ショウトク》が膝をおり、すくいあげたままの両手をにぎりこみ、うなるような嗚咽をあげはじめた。
ただ、兄や、兄や、と声をあげて。




