これで決まり
申し訳ございません。トクジとコウセンの《やりあい》については、『オニのはなし』のほうを、ひろい読みしてください・・・。 (あの場面が書きたくてしかたなかったので、『おとぎばなしまえ』をむりやりつっこみました。。。)
とおした部屋で、丁寧な礼を受け、貸した着物を返してもらう間、トクジは、この数日ずっと考えていたことを口にしてみた。
「おめえ、おれのところに通わねえか?」
そのとき、障子のむこうで盗み聞きしている《男衆》が、とんきょうな声をあげ、うるせえ!と一喝したトクジは先を続けた。
「騒ぎのときに見ていたが、経をすこしは使えるようだな?スザクに教わったか?」
「はい。―― でも、見よう見まねをしているだけですので、まだまだです」
「だろうなあ。 なにしろあいつは、口で人にものを教えるとか考えねえやつだ。 ―― だから、おれが教えてやる」
「ほ、ほんとですか?」
「ああ。それと、さっきの体術はよかったが、誰に教わった? 四の宮の、おっかねえ男か?」
「あ、コウセンさまです。でも、おっかなくはありません」
「なるほどな。テツに聞いた通りだな。これで決まりだ」
「でも、スザクさまとセイテツさまに聞いてみないと」
「それはおれがうなずかせる。それとも、いやか?」
「とんでもありません。 でも、―― さっきみたいに勘違いされて、おれのせいで、トクジさまに、おかしな噂がたったりしないでしょうか?」
立ち上がったトクジは、障子をさっと開き、聞き耳をたてる男どもを見下ろして言った。
「さっきみたいに、こいつらをちょっと一回りさせてやりゃあ、そんな噂はたたねえさ」




