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押し開ける
隠した囲いから、こっちの様子はみえないはずだが、トクジの気のぶれを感じたのだろう。
まずい、と思ったところで《ショウトク》が景色のひずみをみつけて笑う。
「みつけたわ、シュンカ!はやくこっちへこい!!」
狙った場所に投げつけた《印》の文字がひずみを押し開け、シュンカを背に隠したコウドが姿をみせた。
《ショウトク》が、続けて文字を飛ばす前に、コウドが飛び出しクナイをなげた。
駆け寄ったシュンカに肩をかりるトクジは、「でるなって言ったろ」と軽くその頭を叩く。
「トクジさまが逃げるのがおそいからですよ」
「これから逃げるはずだったんだ」
コウドが二人の前に立つ。
「ならトクさん、もすこし足腰鍛えたほうがいい。 ―― シュンカ、たのんだぞ」
「はい」




