本物の『人』
残酷な表現がならびます。ご注意ください。
「 まて!シュンカの『力』は、傷をいやすだけだ。・・・ギョウトクの、身体は、ありゃ、」
ふん、と《ギョウトク》を名乗っていた《ショウトク》が鼻をならした。
「 気味が悪い、というのだろう? ―― みな、そうじゃ。兄やを見たもんは、みなそう言う。 おれたちの親など、うまれた兄やを見なかったことにして、『捨てろ』と言ったんじゃ。 みつかれば、まるで蟲のようにひねり殺されるしかない生き物だと、ばあさまはいうたが、ちがう! あれが、 本物の『人』じゃ! ―― 疑うことも、だますことも、生まれてから一度もしたことのない、まっさらな生き物なんじゃ! ・・・この世に、まちごうて生まれたんで、カタチがおかしくもなったんじゃ! じゃなきゃ、おかしかろう? なンで、兄やだけがあげに苦しまんといかん? なにかの『呪い』かとおもうたが、《解術》はなにも効かんのじゃ! ・・・《術》で、ああなったんじゃないとしたら、 あとは、あとは、
―― 人の体で、《つくりなおす》しか、ないじゃろう?」
たのしそうな顔をむけられたトクジは《ショウトク》のつながった右手を眺めた。




