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宙に舞う
『用心組』用に新しく作られた二階建ての『詰所』の一階は、その日の見まわり当番の者たちが時間ごとに集まり、戻れば報告もすることになっている場所で、詰所の書付役の男がまず最初、戸口に立ったシュンカに気づいた。
ここは《男衆》の来るところで、商売するところじゃねえよ、と言われたシュンカは少し困った顔で、トクジさまにお礼を申し上げたいのですが、と返した。
あれ、トクさんは《そっち》もやったのか、と何人かがおどろく中、なんならおれがお礼をうけてもいいんだぜ、と一人が前にたちはだかり、手をのばしかけたとき、 ―― 男のからだが、宙に舞った。
あっけにとられた周りの男たちが、正気に戻る前に、「天宮、伍の宮のスザクさまより遣いで参りました」ときれいな顔がにっこり笑った。
ようやく、間違いに気づいた書付役の男が平謝りし、投げ飛ばされた男の尻を蹴って怒るのを、シュンカが止めているときに、トクジが戻った。




