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割れ目よりクモ出でる
「 だ、誰だ? 」
さきほどとおったトンボが、まとわりつくようにとびまわり、シュンカが戸惑っていると、上から、柔らかく細い何かがおちてきた。
はっと思ったときには遅く、空から降ったその、白い糸に、全身をからめとられている。
どうにか、一つだけ取り出せた札を足元に投げ、身を投じれば、幾重にもからんでいた糸がほぐれ、まだまとわりつく糸をのけて、這い出せた。
すると、上からこんどはわらいごえが落ち、みあげた空の割れ目から、巨大なクモの、黄色と黒の縞でできたからだが現れる。
そこには、赤黒い着物をまとった大柄な男がのっていた。
クモは、地面にのばした自分の糸をつたっているらしく、シュンカの前に一直線におり立った。




