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出てきたセイテツ
「いやはや、スザクによく似た気配だと思ったら、おまえ、こんなとこで坊主の仕事か?」
「仕事じゃねえよ。 おい、テツ、なんですぐ出てこなかった?」
「すぐ片付くだろうと思ったからさ」
おれは《神官》の仕事の帰りでな、と言ってから、「おい・・こりゃ妖物じゃねえのか?」とばかでかいコウモリの骸が、砂にならないのをみつめ、しばし固まると、いきなり、「ムシか!」と叫んだ。
「なにがだ? ムシじゃねえ。角はあるが、おおもとは、コウモリだろうが。 ―― こりゃあギョウトクの術だ」
「ギョウトク?って、 あの、坊主のギョウトクか?」
いやちょっとまて、とか、でもな、と藁のような髪をかきむしって、うなる男が、だとしたら、と顔をあげて叫ぶ。
「だとしたら、シュンカが危ない! ―― あ、でもそうか。トクさんがついてるもんな」
叫んでから勝手に自分の言葉に納得したようにうなずいた。




