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コウモリ
『コウモリ』と呼ばれる、蟲と鳥のあいのこのような不気味な生き物で、おかしな格好のはねで低く空をとぶ。
だが、襲ってきた『コウモリ』は、見たことがない大きさで、牛のような角があった。
かすめて飛ぶときに起こす風で水がしぶく。
洞窟の中だというのにコウモリは自在にとびまわって襲いかかってきた。
鉤のようにまがった爪と、頭についた角を当ててくるくらいだが、これを片付けないと洞窟からでられないだろう。
しかたなく、背中におった刀の柄をつかみ、鞘からひきぬく。
甲高くいやな声を発しおそいかかってきたコウモリを、まっぷたつにしたところで、ようやく、消していた気配を現した男が、手を叩いた。
「 ―― さすが。 川の中に浸かったのに、鞘は一滴の水もいれてないっていうんだから、サモンがほめる刀だけは、あるよなあ」
のんきな声で塩をまくと、セイテツはそのまま洞窟の奥に進み、つみあがった骸にも塩をまき、スザクにさっさと経をあげろとふりむいた。




