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『奪うまで』
元は『人』だっただろうモノの残り。
細く白い腕や脚がいくつも放り出され、赤黒い臓物がちらばり、先ほどの獣の声を発していたのは、からだの上左半分だけが残った人だった。
『 来るのがおそいな 』
どこからか声がした。
「うるせえ」
こたえると声が笑った。
『 おれがようやくみつけたシュンカを どこかの《元神官》が、横取りしようとしてな 』
「てめえ、―― まさか、わざとホムラを煽ったのか?」
『 あの子どもの『力』は、だれもが欲しいところ 』
「わたすかよ」
『 奪うまで 』
声も気配も絶えたとたん、暗闇から奇声を発した黒いものが飛び出た。




