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分けるものを
「 ―― ギョウトクが生まれたとき、きっと元神官だったばあさまは、息子夫婦にいわれても、死産にはせず、シャムショへ《ギョウトク》の出生をとどけでたんだろ。 そこからずっと、《ギョウトク》は、今まで悪行のひとつもせずに生きてきたんだ。 坊主になろうと思った《ショウトク》は、《ギョウトク》を名乗って高山にはいったから、そりゃ、いくらシャムショで調べたって、《ギョウトク》はずっと真っ白なままよ。 ―― だから、《ショウトク》は、『徳』がとれたんだ」
「・・・そんなに、《坊主》になりたかったのか・・・」
「ショウトクの『力』をギョウトクに分け続けたから、ここまで生きてこられたんだ。 坊主になってさらに『力』が強まって『術』も『経』もあつかえるようになりゃ、もっと分けられるもんが増えるからな ―― だがきっと、近頃じゃあ・・・そろそろもたなくなってきたんじゃねえか」
「もたねえって・・・」
言葉のつまったコウドがみたオフクは、見えない目をトクジにむけていた。




