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勝手な
―― その十一 冬がくる ――
きっと今度も、おんなじことだとオフクという女はうつむいた。
「 ―― 近くの里人が、ここで暮らすあたしに目をつけだして、昼間はまだいいけど、夜に男が戸をたたきにくるようになって、相手にせずにいたら、ある日留守のときに、勝手に入った男がギョウトクを見つけてさわぎながら逃げ帰って、それからなんだか、里で流行る病だとか、稲が育たないのもギョウトクのせいだとかいいだして・・・」
勝手ないいがかりだ、とコウドが鼻をならし、ところであんたはいったい、と今さらながら、女の素性を聞く。
「 ―― あたしはうまれつきこんな目で、すぐに親には捨てられました。それを、産婆だったギョウトクのばあさまが拾ってくれて、育ててくれたんです」
コウドが驚いて、ばあさま生きてんのか!?というのに、えらく長生きして、十年ほど前に死んだのだと言う。




