ムシ
!ご注意を! ひきつづき、暴言、残酷表現あり。
わっしは命は捨てられん、というばあさまを、実の息子である父さんが怒鳴った。
「ありゃ『人』ではないんじゃ!! でてきたときにすぐわかったろが! あげな、気味のわるいカタマリ!!」
――― 人では・・・ない?
「顔も身体もひとかたまりで、目も鼻もただの穴じゃったろ! 口などただの切れ目じゃ! 泣き声じゃない不気味な声をたてて、あんな赤ん坊などこの世におるもんか! 妖物だってもっとカタチがしっかりしとるわ! いいか?ありゃあな、見たこともねえ気色悪いムシじゃ!! でてきたときにその場でおれが、踏みつぶしてやりゃあよかったわ!!」
――― ・・・ムシ?
いきなり、母さんがかけよってショウトクを引きおこして顔をのぞく。
「 ああ、こんなに強くなぐらなくても。 ―― ショウトクはただ、ばあさまをかばっただけじゃろう? なあ?」
頭が止まってしまったショウトクは、何の反応もかえせない。
先ほどまで叫んでいたのがうそのような穏やかな顔で、ほら口から血が出てる、と言った母さまはショウトクを立ちあがらせて、水場のほうへ連れてゆく。




