いちばん悪い
!ご注意を!
これより、暴力、暴言、残酷表現の続く場面となります。くれぐれもご注意ください。
窓や入口からけむを吐く蔵は、すでに、ひさしの下から赤い火をはみださせていた。
一直線に目指したのに、いきなり横に転ぶ。
「なにするんじゃ!」
「ショウトク!こっちにこい!!」
体が大きいとはいえ、まだ父親にはかなわない。
毎日、畑仕事をするその腕につかまれて、家の台所へと連れて行かれた。
なにやら、うめき声のする土間に転がされ、おまえはなにをしとるんじゃ!とどなられる。
転がって見上げた父親は、今までみたこともない顔で見下ろし、襟をつかまれてたたされると、こぶしで顔をなぐられた。
どうやらあの娘が目覚めてしゃべったらしい、とようやく思い当たる。
「やめろお、わっしがしたことじゃあ」
ばあさまの泣き叫ぶ声がした。
見れば、土間の隅に縄でしばられて置かれている。
「ばあさまは黙っとれ!おまんがいちばん悪いんじゃ! なンであのとき、捨ててこんかったんじゃ!?」
母さんがひどい声で叫んでいる。
耳にしたうめき声は、母さんのものらしい。
「あんだけ、頼んだのに!なんで?黙ってひろいやがって!」
どん、と激しく板の間を叩く。




