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『なおせん』
ショウトクの機嫌をとりたいわけではないのだ。
ギョトクは、ショウトクが腹をたてて、怒鳴ったり泣いたりすると、 ―― どうしたらいいか、わからなくて、おろおろと、《心配》 するのだ。
それこそ、泣き止まぬ赤ん坊を、どうしたらいいか、わからないかのように。
『いたいのか?』と何度もきかれ、うるせえ、と怒鳴り返したときに、はじめて謝られた。
なんでおまえが謝るのかと、腹立たしく聞き返すと言った。
ギョウトク なおせん ショウトク いたいの なおせん
また、すまんな、と謝る《兄》の箱に寄りかかり、痛くねえよ、と小さな手をつかんだ。




