てほどき
申し訳ございません。区切りなおしました
「 おい、シュンカ、瓜を食いすぎるとなあ、腹をくだすぞ」
いつものようにからかう声をかければ、上がった顔によろこびでいっぱいだという笑顔をのせて、「トクジさま」と、むずかゆくなる呼び方をする。
いつものように男衆が笑いをこらえ、『さま』って柄じゃあねえよなあ、とこらえきれなかった誰かが口にする。
「おめえらだって、さま付でよんでもいいんだぜ?」
笑った若いのを小突いて横をすぎ、みなに頭をさげたシュンカをせきたて、女主人のいる奥の座敷に移動する。
入り口にいた女たちが、シュンちゃんシュンちゃん、と手をひくのをトクジがはらって、金をとるぞ、とわざとらしい《にらみ》をきかせる。
座敷につくと、高い声をだして迎えたツバメに、シュンカは礼儀正しい挨拶をし、そこからトクジに向きを変え、改めて頭をさげた。
「本日も、よろしくおねがいいたします」
「おう」
そこから座敷の戸をしめきって、二人だけの時間がはじまる。
これからトクジは三時間ほどみっちりと、シュンカに経と術のてほどきをするのだ。




