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勝手な追いかけっこ
「ねえ、あたしもこの蔵、はいってみたい」
「いれるかよ」
ひとこと言って離れようとしたとき、いきなり娘が蔵の中へととびこんだ。
あわてて追うと、娘の甲高い笑い声が響く。
「こっちじゃよ、ショウトク、ほらこっち!」
勝手に追いかけっこを楽しむ娘に、 ―― 腹の中が、わきたった。
梯子をのぼり、捕まえようとした足首が、一瞬早くそれをのぼりきって二階にいった。
「でてけっ!」
「あら、じゃあ捕まえんさいよ」
間をつめて、左右にひらひらかわす娘の着物の袖を捕まえた。
二階からそのまま落としてやろうとしたのに、娘がいきなりからみつき、ショウトクの首にしがみついた。
「っぶ!?」
口にいきなり、娘がかぶりついてきた。




