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思案
なのに、ギョウトクが生きているのはきっと、ばあさまと自分の『力』のおかげなのだろう。
ばあさまはもう歳で、この蔵にもひとりではこられない。
ときどき、蔵の書物を探したいなどと父さまたちの耳に届くよう嘘を言って、ショウトクに手伝ってもらい、ギョウトクの様子を見に来る程度だ。
十五になったら、自分は高山に行く予定だ。
その前に、ギョウトクを誰の目にも触れない、安全な場所へ、移さないとならない。
考え事をしながら蔵を出たとき、いきなり柔らかいものにおそわれた。
「ショウトクったら、また一人で蔵の中?」
同じ里に住む娘だが、ショウトクは名前すら覚えていない。
子どものころから里のこどもたちと交流はないのだが、このごろ急に、この娘だけが、ショウトクのまわりをうろつくようになった。




