123/193
それから何年
箱がゆれるほど、身を動かしたギョウトクが、お、お、と本当の声をあげた。
おとうと? なんだ? おとうと?
「 そうじゃ、ショウトクにも『力』があるからなあ。 ギョウトクの体に、良い『気』が流れるはずじゃ」
ショウトクは、今度はしっかりと、ギョウトクの手をつかんだ。
それから何年、ばあさまと秘密を守ってギョウトクを守っただろうか。
ショウトクは十三になった。
体はあいかわらず大きかったし、いまでは遠い里の医者の家に手伝いにゆき、医学を学んでいた。
だが、たしかに医術はすばらしいが、神官や坊主がつかう術には及ばないというのがショウトクの気持ちだった。
ばあさまやほかの神官たちをみて、自分は生を祝福する『者』ではないと感じたので、坊主になることにした。
あとは、どこかの坊主に推してもらって高山へ、修行にゆけばいい。
そうすれば、もしかしたら、
ギョウトクを、もっと『人』らしく、してやれるかもしれない。




