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たまご焼き
ショウトクは、そっと足を動かし、ゆっくりと箱に近づいた。
また、《あれ》を見るのかと思うと、心臓がいたくなりそうだったが、―――
ショウトク たまご 好きか?
「え?・・たまご?」
ばあさま たまご うまいぞ やるぞ
のぞいた箱のなかに、はさきほど目にした『もの』がいた。
それが、ショウトクに卵焼きをくれるという。
「・・・いらない・・」
・・・うまいぞ
箱の中のギョウトクが、みじろぎした。
「いいよ。 だって、―― 知ってるから。 ・・・おれ、・・・弟のショウトクだよ」
そっと、ゆっくり、 ―― おそるおそるのばした手で、自分より小さな、ギョウトクの手にふれた。




