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《穴》のむこう
こわくはない。
だが、どうにもおかしな匂いがする。
風にのって匂いがするのか
風がくるということは、むこうがどこか、開いているということだ。
迷いもなく体をかがめて、《穴》に足をいれたとたん、声がした。
だれ? ばあさま?
「っつ!?」
さすがに慌てた。
自分のほかに、誰もいないのに声がした。
しかも、耳に届いたというよりは・・・
「 お、おまえこそ、だれだ? よ、妖物か?」
ばあさまに聞いたことがある。
人ではない、おそろしい者だと。
よおぶつ? ・・ギョウトク
「 ・・・ギョウトク? ふーん・・・ おれはショウトク」
・・・ショウトク?




