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蔵
裏の『蔵』に、ばあさまが、ときどき、こっそりと入ってゆくのを、ショウトクは知っていた。
初めは、なにかの調べものか、用があるのかと思っていたが、ある日、ばあさまは、夕飯を片付けるふりをして残り物を隠し、それを持って、蔵へ入っているのだと、みやぶった。
まだ六つにもならないショウトクに、その飯の残りを、隠れて食べているのだろう、と言われたばあさまは、あたりをうかがい、笑ってうなずいた。
腹が減ったときに、とっておいたそれを、たべるんじゃ。 だれにもいうなよ
ばあさまと約束したショウトクは、だれにも言わなかったが、それを食べたいと思った。
ある日、ひとりで留守番をし、『蔵』でまだ、手をつけていない書物を探しているときに、腹がへってきた。
ばあさまの話を思いだし、蔵の中をうろつきまわる。




