110/193
『なにをしている』
ここから暴力場面、残虐描写あり。ご注意を。
ススキをわけいり、いくつかの丘をこえて、煙を見下ろす位置にきたときには、二人はすでに走って跳んでいた。
白かった煙はいまや黒くなり、見下ろした崖下の小さな小屋は燃えていた。
それならばただの火事だろうが、小屋の周りには、斧や鉈を手にした男たちが集まり、なにやら叫ぶ一人の女を、 ―― ひきまわして、転がしていた。
はなしてください!ああ!たすけてください!
悲鳴をあげる女を蹴ろうとした男の脚に、コウドが投げた両刃の刃物が深くささった。
叫んで転がった男のそばに、いつの間にか刃物の持ち主が立って冷たく見下ろし「 おまえら 何をしている 」と聞く。
男たちは突然のできごとにおそれてあとずさり、さがったらさがったで、そこにいきなり立っていたトクジに驚き、手にした斧などをあわててかまえる。




