おもいこみ
申し訳ございません。ひゃくこえてしましました。
「 ――― そりゃ、トクさんがそういう気はない、ってのはわかってるけどさ、あの女があんまりしつこく、 自分はトクさんに身請けしてもらえる自信があるんだ、 なんて言うからさあ」
「おれが、身請け?」
『身請け』とは、茶屋の女を金でこの商売からぬけさせて、自分の嫁にすることだ。
そりゃねえだろう、とコウドが代わりにこたえると、だよねえ、と女もため息をついた。
ヤマメとよくつかみあいのけんかをしていたというスズメという女だ。
色の薄い唇をとがらせ、うらめしそうにトクジを見上げる。
「わかってンだけどさ、 トクさんは、あんな憎らしい女にも優しいもんだから」
コウドが笑い、ヤマメとよほど合わなかったんだなと言えば、あの女、と眉尻をあげた。
「 ―― 自分はトクさんをなぐさめてやるんだ、とか言うのさ。トクさんにひっついてるチゴのガキは近いうちにお迎えがくるんだから、とかいいやがる。 ―― それって、あの、シュンちゃんのことだろう? あたしは、街中で倒れてるのをあの子に助けられてね。 それで病が見つかってここに入ることになったのさ。 あの子がどンだけいい子かは、ときどき世話番が預かってくる手紙読んだってわかるってもんさ。 ・・・それを、あの女」
自分がシュンカを『ムシ』に売ったのだ、と笑ったという。




