第六話 友情ガチャ
陳謝
「呆気ねぇ、いやそれより……恥ずかしい……」
俺から出たのはそんな感想だった。
どうやらレベルアップはしなかったらしいが今はそんなことどうでもいいのだ。
それは俺の感情は予想していたものではなかったためだった。
直接自分が手を下したことにより死を更に自覚するかも知れない、ゴブリンに奮闘の末に勝利して達成感やら自分の成長を実感するかも知れないなどの俺が色々考えていたことは全て無に帰してしまった。
魔法だって使って全力で使うつもりできたのだが、正直のところ拍子抜けだった。
やってから意外と簡単だと気づくことは沢山あることだが、ダンジョンもそれに当てはまるのかも知れない。
「いや……てか、ガチャポイント……って言ってたよな」
少し経って顔から赤み引いた頃、ここで俺は先ほどのアナウンスを思い出した。
それは経験値とガチャポイントを入手したと言うものだった、間違いなく【異世界ガチャ】に関連することは間違いなさそうではある。
「ステータス……。」
俺は固唾を飲み込み期待を込めて、鑑定を使いステータスを開き、固有スキルの異世界ガチャを見たのだが……。
「……なんも変化ないんですけど……。」
どうやら異世界ガチャはなんの変わりはなかった。
しかし、俺が肩をガックリと落としたその時つい昨日入手したスキルに目が行った。
「いやちょっと待て?……ん?友情ガチャが赤くなってる……?」
友情ガチャと書かれたその文字は黒字からうっすら赤く変色していたのだ。
一目では気づくことの出来ないくらい鈍く薄暗く発光する赤文字の"友情ガチャ"と言うスキル名。
俺は再び、息を呑み固唾を飲み込みその文字をタッチした。
『——"友情ガチャ"が一回、回すことが出来ます。』
「まじか……」
タッチした瞬間にそんなテキストメッセージがステータスの上に表示された俺は思わず目を剥いて驚いた。
心の中にはあの時、異世界ガチャと出会った時の様な興奮が渦巻いていた。
《 Yes , No 》
「…………。」
そしてそんな感傷に浸っているとガチャの確認メッセージが表示がされた。
俺の指は秒で自分の意志と関係なくすでにYesを押していたのだった。
すると小さく白く眩い光が目の前で発せられた。
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【運力】+1
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そして、そんなテキストメッセージが表示されたのだった。
「ん?運力?……なんだこれ」
予想外の結果に俺の脳内は一瞬フリーズした。だがしかしそれも本当に一瞬の出来事であり、ステータスを見て俺は驚愕した。
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ステータス
八町 次継 Lv.1 《SP:0》
性別:男 年齢:28
職業:※設定していません
【体力】:5
【魔量】:5
【攻撃】:5.5
【防御】:6.5
【智力】:5
【敏捷】:5.5
【運力】:25→30
【スキル】
筋力強化(F級)1/2、敏捷強化(F級)1/2、運強化(C級)、守備強化(E級)、鑑定(D級)
【固有スキル】
New !!
異世界ガチャ《友情ガチャ》
【使用可能魔法】
ファイヤボール(F級)、ウインドボール(F級)、ウォーターボール(F級)
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俺の【運力】のステータスが大幅に上昇していたのだ。
「もしかして……基本能力UPってことかよ……」
俺は驚愕のあまりそう呟く。
ここでその驚いている理由について説明をするのだが、その前に実は能力強化系のスキルは持っていると対象ステータスに常に倍率がかかるようになると言うことを説明しておこう。
そして倍率は級によって変わるのだが、それは下記のような倍率補正がかかる。
【F級】 1.1倍
【E級】 1.3倍
【D級】 1.5倍
【C級】 5倍
【B級】 15倍
【A級】 50倍
【S級】 100倍
この通りC級からは倍率、そして共に取得確率も数段に跳ね上がる。
しかもSPを使用取得する場合でもかなり大量のポイントを消費するらしくC級以上の能力強化系のスキルを持つものは大変少ない数しか存在しない。
それを踏まえて考えると最初にステータスを入手した時にダンジョンで会った若い3人組は相当優秀な人々だったのだ。
いや……話が少し逸れたが、能力強化系のスキルの全貌を知ったことで俺が驚いていた理由が分かったであろう。
「これが……モンスターを倒すたびに入手できたらえらいことだぞ……。」
もしガチャポイントがモンスターを一体倒すたびに入手可能で、この基本能力UPが"友情ガチャ"のガチャ報酬であるなら本当にやばいことになることは間違いなかった。
俺は今、筋力と敏捷、運、守備に倍率がかかるようになっている。
しかも運はC級、5倍の倍率だ。たった1基礎能力が上がるだけじゃない、一気に5上がるのだ。
基礎能力が元々低い俺にとってこのガチャはまさに僥倖。
「これはやってみるしかないよな……」
だがしかしこのガチャ結果が実は超大当たりだった可能性もあるし、先程言った様にモンスターを倒したら必ず入手出来るとも限らない。
「おっし……」
俺は気合いを入れ、それを確かめるためダンジョンを進んでいった。
俺がゴブリンだって倒せたのはまぐれだったと言うのに……。
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