第五話 弱者のくりてぃかる!
すいません……色々私事で遅くなってしまいました。
楽しんでもらえると非常に嬉しいです
《——異世界ガチャの"隠れミッション"がクリアされました。》
《——報酬に"友情ガチャ"機能が解放されました。》
「……はっ?」
突拍子もないアナウンスに俺は思わず驚きの声を上げた。
「……?何かあったの次継?」
「いや、どうって訳じゃないんだけど……いや、大丈夫だよ」
蘭は頭にはてなを浮かべ俺を見る。
いや素直に言うなら、大分どうって事態だった。だがしかしそんなこと蘭に話せる訳もなく……。
隠れミッション?ってなんだよ、いや友情ガチャの方が意味不明か、それよりもなんで今解放されたんだ?なんて考えていることは無論、口に出せるはずはなかった。
「………ふーん、変なの……まぁいいわ、それよりこれからどうする?」
その蘭の言葉に俺は「よかった言及しないでくれて」と内心ほっとした。
「あ、ああ……んーと、ダンジョンは24時間営業だけど流石にもう遅いし、蘭も早く帰りたいんだろうし?」
「え?誰がそんなこと言ったのよ」
「ん?いや今朝言ってましたけど……。」
「あっ……」
俺がそう言うとそう言えばと思い出したように蘭は声を漏らした。
「そ、そう言えばそうだったわね……」
「お、おう、じゃあ今日はお開きでいいか?」
「え?いや……うん」
蘭は何か一人で葛藤しているようだったが、結局今日はこれでお開きと言うことになった。
俺は蘭を駅まで送り届け、そして帰路に着いた。
こうして俺は一人の友達と『友情ガチャ』を手に入れた最良の一日が終わったのだった。
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『——なんだか長い道のりだった気がする……!』
次の日俺はやっと、本来の目的で大突ダンジョンに訪れていた。
そして、俺は鑑定を使いステータスを表示すると【固有スキル】と書かれた場所を見た。
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ステータス
八町 次継 Lv.1 《SP:0》
性別:男 年齢:28
職業:※設定していません
【体力】:5
【魔量】:5
【攻撃】:5.5
【防御】:6.5
【智力】:5
【敏捷】:5.5
【運力】:25
【スキル】
筋力強化(F級)1/2、敏捷強化(F級)1/2、運強化(C級)、守備強化(E級)、鑑定(D級)
【固有スキル】
New !!
異世界ガチャ《友情ガチャ》
【使用可能魔法】
ファイヤボール(F級)、ウインドボール(F級)、ウォーターボール(F級)
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「異世界ガチャ《友情ガチャ》……って……」
たった昨日に入手したスキルが更に俺の頭を悩ませていた。
蘭と握手したら入手と言う、なんとも奇々怪々な入手法を持つスキルはもちろん詳細も不明だった。
帰った後、異世界ガチャのスキルをもらった時と同じく調べたのだだったがやっぱりダメだったのだ。
「結局……ダンジョンに潜らなきゃ分かんないか……。」
俺はそう言い、ステータスのウィンドウを閉じた。
俺は胸当て防具と短いナイフは一応用意したが、内心はかなり不安だった。
そもそも【異世界ガチャ】と言うスキルを手に入れても、俺のステータスの元々は常人の三分の一程度、ガチャを引いた後でも平均を超えたのは運のみ……ダンジョンには少々危険である。
だがしかし俺は何か確信を持っていた。異世界ガチャを手に入れた時の俺と今までの俺の明らかな違い、それは勇気だった。
一歩踏み出す勇気、今までの人生で何回聞いたことがあるだろうか?そんなありきたりはやっぱり大切なものだったのだ。当たり前だと目を逸らしている者には、勇気と言う言葉の深さが分からないのだ。
俺はそんなことを少し最近学んだ、自分でも少しずつ変わろうとしているのだろう。
「……行くか」
俺は自分の成長を実感しつつ、憧れのダンジョンに入っていくのだった。
「おおっ……」
ダンジョンは噂に聞いてた通りの所だった。日は完全に遮られているはずなのに少し明るく、温度湿度も丁度よくて快適である。
「でもモンスターが居ないな……」
俺は周りを見渡すがモンスターは一匹としていなかった。
初心者が良く入るダンジョンだからモンスターが湧くのが少し遅れいるのかも知れない。
と言うのもダンジョンはゲームと同じ様に自動的にモンスターが湧くするのだが、それもゲームと同じようにある程度の待機時間が必要となる。つまり人の出入りが多いダンジョンではモンスターの枯渇が起こることなる場合があるのだ。
「まぁ、移動してみるか……」
俺は場所を変えようとした……その時だった。
「——グギャ」
——俺の前にゴブリンが湧いた……。
その声が聞こえた瞬間、俺の身体は震えた。
それは武者震いではないただの恐怖ゆえの震えだった。
石斧を持ったゴブリンはじわりと異様なオーラを漂わせ、その恐怖で俺の体を金縛りような束縛感が全身を覆った。
それもそうだと俺は思った、いくら10年前から価値観もありとあらゆる物の感じ方が変わったからと言って俺は一般庶民だった。
生物と殺し合いなんてしたこともないのだ。
ペットなった犬や猫は人類が滅びれば同時に滅びる、なんて言われているのは安全圏で狩りなどをしなくなった生物がどれだけ脆弱かを問われている。
人間にもそれは当てはまると言うことだ。
人間も今のインフラが無くなれば簡単に大量の人が死にゆく、それは何も考えなくて良くて、与えられて生きているからだろう。
進化の過程で人類は科学と安全を手に入れた。
その過程で取捨選択は知らぬ内に行われて、死というものはだんだん人々の生活から遠ざかっていたのだ。
俺は思い出したのだ。ダンジョンにとってどれだけ死が近しい存在なのかを……。
「……やべえなぁ、ゴブリンでこれかよ。」
「グギャグガ……。」
俺は自分の脆弱性について今まで散々知ってきたつもりだった。
ステータスがオール5だったし、社会としての地位も低い。ただそれは表面状で理解していただけで本当には理解していただけかも知れない、でなければダンジョンに潜ることなんてしなかった筈だ。
俺はどこか異世界ガチャと言うのを手に入れて、友人が一人出来て調子に乗っていたのだろう。
「そうだな……やっぱり弱い、俺は」
ゴブリンを前にそんな独り言を吐く。
たった一匹のゴブリンにこの気合いの入れようは笑われてしまうだろう、ただしかしこれは弱音では決してない。
俺は震える手を精一杯握りしめて自分に喝を入れた。
そうして俺は腰に携えたナイフを手に取り、こう放った。
「——だけど、強くなりたい!」
俺は走り、ゴブリンには大ぶりな短いナイフの刃が迫る。
それはだんだんとゴブリンに吸い寄せられるようにして……。
「ギャッ……!!」
呆気なくゴブリンは刃に当たり消滅した。
「あれっ……?」
《……経験値7Pとガチャポイント1Pが付与されます》
そんな無機質なアナウンスが流れ、勝負結果の報告が行われる。
長々と今まで語った苦悩は何処へやら、結果は呆気なく訪れたのだった。
そんな俺の顔は確実に赤面していた。これだけ意気込んだ結果がたいしたことではなかったためだったのだが……。
それは実は運の勝利だった、それはこの時の俺はまだ知る由もなかった。
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