第四話 似たもの同士
陳謝!
一日ほど遅れてしまいましたがお楽しみください!
俺は三度目、三日ぶりのダンジョンに着いていた。
「——へぇーここが大突ダンジョンね、以外と大きいんだ」
坂百 蘭、彼女はダンジョンの入り口まで着くとその巨大なダンジョンを見上げ感嘆の声漏らした。
「ああ、大突ダンジョンはこの市内でも一二を争う巨大ダンジョンなんだ。モンスターも弱し、中は広いから初心者にはピッタリのダンジョンなんだよ」
「ふーん……まぁ、そんなこと別に知ってたけど」
「あ、ああ……。」
「……。」
——気まずい……。
俺はもうすでに心が折れそうになっていた。
俺は一応会話は努力したのだが、ここへ行くまでの道すがらでも俺への彼女の返信は冷たいものだった。
——俺ってこの子に何かしただろうか?誰か教えてくれ!
俺は女子高生との会話の難易度がこんなに高いなんて知らなかった、と頭を抱えるが彼女はそんなことはつゆ知らず……。
「——……。」
俺と彼女は気まずい無言のままダンジョンへと入っていくのだった。
「——ダンジョンでステータスを獲得するにはあの受付でまず書類を記入しないと行けないんだけど……ちょっと混んでるな……。」
ダンジョンに入るとまず大きな広間があり、そこではステータス獲得の手続きやらダンジョンの説明などを受けることができる。
俺が前ステータスを獲得しに来た時はそんなに混んでいないと思ったのだが今日は休日ってことが原因なのか、とても混雑していた。
俺たちは受け付けをすまし、整理券を受け取った。
その度に坂百 蘭、彼女が何度か「はぁ……」と小さく安心する様なため息をついていたのだがそれが何だったか、俺はまだ知らなく、特にも気にしていなかった。
そしてステータス獲得までの待ち時間の間、俺と彼女は椅子に腰掛けていた。
そして何度目かも分からない無言の時間が到来していた。俺は何か話そうと踏ん張るがやっぱり女子高生が盛り上がる話題なんて知っている訳もなくそわそわしているだけだった。
そんな時蜘蛛の糸なのか、知らない若い女性が話しかけてきた。
「——あれ?もしかして蘭?」
坂百 蘭、彼女は名前呼ばれビクッと肩を震わせた。
知っている人なのかそれは分からなかった。だが彼女の驚き方はただビックリした、と言うものでは無かった。
どうやら俺が蜘蛛の糸かと思ったものはそうでは無かったらしかった。
「蘭じゃん!わー久しぶりだねぇー!元気してたぁ?」
「う、うん…………。」
彼女は俺と初めて会った時とは全く違う、借りてきた猫のようになっていた。
そんな何かに押し潰されそうな返答をする彼女を気にすることなく、その女の人は続け様に喋る。
「学校来ないからみんな心配したよー!」
「あ、ごめん……。」
「あ!てかそう言えばなんでダンジョンに蘭がいるのよ!?」
「それは……」
「えー!もしかして冒険者になるの!?」
「いや……」
「まさかぁー本当になるの?やめときなって!蘭には無理だよー!」
ここら辺からだろうか、俺は眉間に皺を寄せていた。
「あと!横の男の人誰なのよ!」
「え……」
「お父さんにしても若いよね……も!し!か!して!彼氏!?」
「あの……」
「へぇー蘭って歳上好きだったんだねぇ〜しかも結構歳上!」
「……」
「あーだから今まで恋愛に興味ないとか言ってたんだ!なるほどねぇーこう言うことかぁ〜」
相手の女性が一方的に話をするたびに彼女の顔はどんどん曇り沈んでいた。
俺はこの感じを見たことがあった、知っていた。
昔経験してような苦い記憶、これはいじめられてもないし、からかわれてもいら訳でもない……ただ強要されているのだ。
俺は次に来る言葉が容易に予想ができた。
「なんだぁー!言ってくれれば良かったのに私たち……」
「——あー!!!そう言えば忘れてた!!!」
「は?」
「え!?」
俺はそう言うと、驚く彼女の手を握りダンジョンから飛び出した。
おそらく言おうとしてた言葉は
——私たち友達でしょ……。
そんな陳腐なものであろう。この台詞は文体で見るといい言葉のようにも見える、ただ本当に心から思ってない人から言われた場合それは人を縛り付ける鎖となる。
肉体的には痛くもない、ただ心にずっと棘が刺さってる感じになる。
俺と彼女はダンジョンからしばらく走り近くの公園まで来ていた。
「ね、ねぇ!ちょ、ちょ……っとなんなのよ!いい加減離して!」
「あ、ああ……」
ゼハーゼハーとお互い肩で息をしながら立ち止まる。
「別にあなたが考えているような……ものじゃないから……正義の味方面されたって……意味なんて……」
彼女は下を向き息を切らしながら必死に言葉紡ぐが、おそらく俺はこのアンサーを知っていた。
高校生の頃、冴えなかった俺がクラスの明るい人にお情けで話かけてもらっていたあの感じ……。
結局対等ではない、相手はただの慈善活動の一環としてやっているだけで周りに優しいねとか誰とでも仲良くできるって見せつけたいだけ……つまり一方通行、俺たちの意志は反映されない。
先生も世間も話せてるから仲がいいと思い込んでいる、だけどもそれが違うと反論したい俺は当時、誰かにこう言って欲しかったのだかも知れない……。
「——でも、友達じゃないんだろう?」
「え……?」
彼女は上を向いて俺の顔を直視した。
彼女の目は太陽光に反射されていたからなのか、キラキラと眩しく潤って見えた。
そして、俺たちは公園のベンチに腰掛けた。すると、少ししてから彼女は自分のことを少しずつ話し始めた。
高校に入って少ししてから不登校になってしまったと彼女は語った。
それは高校生デビューによるものが大きかったらしい、好きなモデルに憧れて髪色を明るくして高校に入ったらいきなり今まで絡んで来なかったタイプがすごく話しかけてきたらしい。
最初は楽しかったらしいが、ボロは直ぐに出てきて価値観の違いも好きなものも、それが何か疲れて嫌になってしまったと言うことだった。
俺は何か共感出来た、それだけだから辛いんだよな。
それだけだから嫌とも言うのは違うし、でも彼女は違うと言いたいなんて思ってのだろう。真逆の自分の心に挟まれてしまった結果は不登校と言う形になってしまったのだろう。
いや、てか店長はなんで嘘までついてそんな娘のことを俺に預けたのだろうか?
そんな疑問を投げかけるとずっと店長は俺をいい人だと家族に話してくれたと言っていたと言う情報は出てきたが、真の理由はよく分からなかった。
だがしかし、初対面からの印象が最悪だった理由も紐解けたような気がした。
娘として店長はいい人だから話しに出てくる俺が怪しかったのだろう、いやそもそも今日初めて会った見ず知らずの男を警戒しない方がおかしいのであった。
店長は今思えばとんでもないことをしでかしてのではと俺は気づいた。
そんなことを話している内に太陽は傾き、グラデーションかがった空が佇んでる状況となっていた。
「……あの……なんかごめん……あなたに話しても別に意味ないのにね……」
「……いや、人には話した方がいいよ。問題はなくならないかも知れないけど、肩は軽くなるだろ」
「ふふ……そうかもね……全くこんなに喋ったの久しぶりよ」
「はは、俺の耳でよければいつでも貸すよ」
そしてこんな風に俺たちはいつのまにか普通に会話出来るようになっていた。女子高生とかたや28歳の冴えない男だがどっちもプライドが高くて弱い、そんなお互い似たもの同士なのだ。
「でも結局ダンジョンでは何も出来なかったな……俺たち一体、何しに来たんだろ」
「確かにそうね……でも今日は何かスッキリしたわ……その、ありがとね……」
彼女は恥ずかしかったのかそっぽを向き小さくお礼を言うと、少し息を置くと振り絞ったように微かな声でこう言った。
「——ねぇ、連絡先でも交換しない……?」
「……へ?」
ロマンチシズムな背景の中、俺は素っ頓狂な声を上げた。
「馬鹿っ、変な意味じゃないし……学校で必要ってのは嘘だったけど、ダンジョンには興味あるし……」
「ああ、そうか。確かに……必要かもな」
後々考えれば別に店長に連れてもらえば良かったんじゃないか?なんて思うがこの時の俺はびっくりした影響か脳機能は停止していたのだった。
「……じゃあ、おっけいなのね……スマホ貸してよ」
彼女に言われるままに俺はポケットからスマホを取り出し、ロックを外し渡した。
「え?あんたLINEやってないの?」
「友達いないんだよ……」
「ごめん……悪いこと聞いたわ……」
さりげに傷つくやり取りを終え、彼女は俺のスマホに電話番号を登録した。
「……はい……ありがと、後さ……」
「ん?」
「……な、名前!名前なんて言うのよ……苗字が八町っことはお父さんから聞いて知ってるけど……あんたじゃ呼びずらいし、教えてよ……」
彼女の再度の提案に俺はハッとした。店長から聞いて彼女のフルネームを知ってたが、俺はそう言えば事項紹介すらしていなかったのだった。
「はは、一番最初にやること吹っ飛ばしてたな、俺は八町次継って言うんだ」
「そう……次継ね……わかったわ、私のフルネームは坂白 蘭、蘭って呼んでくれればいいわ」
彼と彼女はこうして出会った。
蘭は手を差し伸ばし握手を求める、俺はそれに応じ手の伸ばした。
「よろしくね……次継」
「ああ、よろしくな蘭」
お互いの手と手が初めて重なりあった。
その時だった………。
《——異世界ガチャの"隠れミッション"がクリアされました。》
《——報酬に"友情ガチャ"機能が解放されました。》
三日ぶりに脳内であのアナウンスが鳴り響いたのだった。
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