第三話 ヤンチャガールは手に余る
ダンジョンPartは少しお休みしてヒロイン登場です!
——俺が【異世界ガチャ】を入手してから2日が経っていた。
「八町くん、レジ締めちゃってー。」
「了解です、店長。」
小太りのいつもニコニコしている、いい人を体現したかの様な店長は俺に閉店前の準備をする様に言ってきた。
返事をした俺はレジの前に立ち、お金とレシートを交互に見て誤差がないか確認する。
俺はその作業をしながら、異世界ガチャについて考えていた。
あの後スキルを手に入れた俺は、少ししてからダンジョンから出たのだが【異世界ガチャ】があったダンジョンはまるで最初からそこにはなかった様に消えてしまっていた。
だがしかし家に戻り就寝した後もステータス欄には【異世界ガチャ】と文字が刻まれたままで夢では無かったのだと再確認することができた。
しかし、夢では無かったことみたいにいいことだけでは無かった。実は【異世界ガチャ】の使い方はどこにも明記されてなく、使い方が不明だったのだ。
俺はステータスを触ったり色々と試行錯誤して見たが何も変化は見られ無かった。
もしかしたらダンジョンに行ってみれば何かが分かるかも知れないとは思ったが、それはバイトのシフトが許してくれなかった。
俺はここ2日ダンジョンに全く行けてなかったのだ。
丁度明日は休みである。俺はうきうき気分でレジを閉める作業を急いだ。
そして、そんな考えていると先ほどから店長から呼ばれていることに気がついた。
「——八町くん?おーい!八町くーん!」
「あ、は、はい!」
「大丈夫なのかい?ここ2日ぐらいやけにボーとしてる様だけど……何かあったのかい?」
店長は心配してくれるが、もちろん本当のことなんて言う訳には行かなく……。
「あはは、だ、大丈夫ですよ。」
いい人の店長に嘘をつくってのは少し良心が痛んだが俺は笑う真似をする他なかった。
「本当に?全く心配だなぁー」
そう言い店長は朗らかに笑いながら、ほうきを取り店内を掃除する。俺はごめなさいと心の中では謝っとく。
そしてそれから少し経った頃、俺と店長が服を店内着から私服へと着替えていると店長は決心したかのように俺に話しかけてきた。
「あの……そう言えば八町くんってステータス獲得したんだっけ?」
「……え?あ、はい一応です……。」
俺は店長から急にダンジョン関連の話題が飛び出してきてビクッと身体を震わせた。
そのせいか俺はしどろもどろな変な返答をしてしまった。
「本当かい!良かった!でそんな君に……ちょっとお願いしたいことがあるんだがいいかな……。」
そういうと店長ははっきりとしない様子で少し溜めてから深呼吸し、言葉を紡いだ。
「——悪いんだが……私の娘を一緒にダンジョンに連れて行ってくれないか……?」
「え?」
俺は疑問符を口にすることしかできなかった……。
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翌日、俺は駅前で人と待ち合わせていた。しかも女性とだ。
こんなわくわくするイベント、現実で産まれてこの方プレイしたことがなかった。
そして、「大丈夫だ俺!この日のためにギャルゲーは一通りやってきたんだろ!」なんて自分を鼓舞しているとその彼女はそれを打ち砕くかのように唐突に現れた……。
「——……はぁ……冴えないわね。」
そして、開口一番ぶっ込んできた彼女は坂百 蘭と言う16歳の少女だった。
そんな少女に俺は初対面初の印象を「本当に血は繋がっているんだろうか……?」なんて感想抱いた。
それもその筈で彼女、実はあの店長の娘なのだ。いつも物腰の柔らく穏やかで優しい店長のDNAを本当に受け継いでいるのかと疑いたくほど彼女の出会い頭の一言は冷ややかなものだった。
さらに容姿に関しても彼女は一流のモデルと比較しても見劣りしないぐらいに整っており、ポニーテールの赤みがかった髪の毛は艶やかで美しかった。スタイルも俺の頭一つ分小さいから150cmくらいだろうか?保護欲をそそられるほど可愛く儚げな彼女に店長の面影は全く感じられなかった。
いや、店長を馬鹿にしている訳ではないのだが……。それほどまでに店長とこの少女にはギャップがあった。
「たくっ、なんで私がこんな男に付き添われなきゃ行けないのよ……。」
「はは……。」
彼女は俺に聞こえるように文句を垂れ流しているが、それに関しては俺も近い意見を持ち合わせていた。
そもそもなんで俺がこんなことになっているのか謎である。
俺は昨日店長から「娘をダンジョンに連れて行ってくれ」なんて頼まれたが、もちろん断った。
すると店長が頭まで下げてきたのだ。
弱いからお役には立てませんよとも言ったのだが、店長は大丈夫と行ってきた。
そして、理由を聞くと学校で急遽ステータス獲得が必要になったのだが、未成年にはステータス獲得には成人した大人の同伴が必要で店長と店長の奥さんは急遽には仕事の休みが取れなかったらしく、知り合いの人にも総当たりしたらしいのだが結果は芳しくなかったらしい。
そこで俺に白羽の矢が立ったのだと店長は言った。
そしてそこまで聞いた俺は店長へのしぶしぶ店長の依頼を受けることにした。
店長も俺に頼むまでになったってことは相当探したのだろう。恩義もある店長にそんな失礼もできるはずもなく俺はこの状況へと至ったと言う訳だ。
「はぁ……もう!とっと終わらせて早く帰ろ……」
「……。」
「は!や!く!行くわよ!!。」
「え?あ、ああごめん」
ずんずんとダンジョンの方向へ進む彼女を尻目に俺は「JKってすげぇー」みたいな適当な感想しか出てこなかった。
俺は何故かこうして、女子高生と三度目のダンジョンに向かうのだった。
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