第0話 底辺は死ぬまで底辺なのだ
「——俺もついに……ダンジョンデビューだ!……」
俺はわくわくを顔からはみ出してダンジョンの敷居を跨いだ。
現代にダンジョン呼ばれる異世界迷宮が出現したのは今からたった10年前の話だ。
しかし、その数は今で確認されるもので数十万をゆうに超えていて、ダンジョンではこれまでの科学では精製不可能だった資源や財宝が豊富に存在していることから今では国、企業、個人問わず一大産業として確立されていた。
そしてダンジョンでは"ステータス"と呼ばれる冒険者としてのいわゆる格、技量やセンスなどが数値として表示される。
それはダンジョン外でも有効で"ステータス"が現実世界の進学や就職にどれだけ大きな影響を及ぼしたことは言うこともないであろう。
10年前の人々が子供の頃に夢を抱いたあのファンタジーは今や人々の生活の一部となっていた。
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「——よわいぃ……。」
公衆の面前で俺はつい呟いてしまった。
俺はついに街のダンジョンへ行きステータスを獲得したのだが……。
結果は以下の通りだった。
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ステータス
八町 次継 Lv.1《SP:0》
性別:男 年齢:28
職業:※設定していません
【体力】:5
【魔量】:5
【攻撃】:5
【防御】:5
【智力】:5
【敏捷】:5
【運力】:5
【技能】
nothing
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「オール5!?」
それは今までどうやって生きてきたんだ?と問いたくなるステータスだった。
冒険者のステータスの平均は約15程度と聞いている。それに乳児でもステータス平均1あると言われていることから俺は乳児に産毛が生えた程度なのかとため息を吐かざるおえない現状だった。
俺は明らかに弱かったのだった……。
「技能も、nothingってわざわざかっこよく書かなくても……。」
俺は色々とツッコミを入れてしまっていたが、心の中は凄くブルーになっていた。
ダンジョンが世界に顕現したのは俺が当時18歳だった、今でもあの惨劇と興奮を覚えている。
ダンジョンは世界に資源をもたらすと同時に世界に災害をもたらした。ダンジョンが創造されるのは大方地中深くに出現する、そのための大地殻変動により地上世界は一時酷い状況へとなった。
かく言う俺を含め沢山の人が日常生活が普通に営めなくなったのは語るまでもなく、だが実の俺の心の奥底はわくわくしていたのだった。
ある日突然今の世界がファンタジーの溢れる世界になるなんて男の子なら一度は憧れたシュチュエーションだろう。
不謹慎と言われるかもしれないが、それが本当の気持ちだった。
「でもこんなんじゃ、ダンジョンに入るなんて……無理だよな……」
だが自分が主人公になることが出来るなんて所詮架空の物語だけなのだと現実を思い出さされる。
そして、そんなことを思い耽けっていると後ろの方から若い三人組の男女達の声が聞こえてきた。
「——なぁ!みんなステータスどうだった!?」
「まぁまぁ良かったな、技能も鑑定(E級)に魔力増強(C級)、 全攻撃魔法適性(C級)だったよ。汎用性が高い技能があって良かった……。蜜環はどうだった?」
「累さんは攻撃魔法特化ですね!ちなみに私は支援魔法(C級)に回復魔法(B級)、魔量増強(C級)でした、僧侶系ですかね」
「おお!みんないい技能貰えたんだな!」
「将君はどうだったんですか?」
「おお!俺は筋力増強(B級)に剣術成長補正(C級)だったぜー!」
「いいな、俺たち技能が合ってる……。将が前衛で俺が後衛、蜜環は支援って感じでうまく行きそうだ……。」
「おう!これから俺たちの英雄譚が始まるんだな……!」
「ああ」
「そうですね!」
凄く眩しく笑っていた、肝心の俺は側から眺めるだけしかできない。
——そうだ俺はこんなことがしたかったんだ。
俺は自分の本当の夢を思い出した。
こんな仲のいい友人達とわくわくの止まらない異界の地を探索する、くだらないことで笑って叶う筈のない夢を抱えて、馬鹿みたいに過ごしていく……そんだけの夢。
だけどこの歳になってあるのはすっからかんの預金通帳と情けない自分だけだった。
「俺には…‥結局何もなかったんだな……。」
そんな溢れでた本音が胸に突き刺さった。
ダンジョンの地殻変動で訪れた就職氷河期に当たった俺は低学歴、28歳にして職業はフリーター。
いや就学氷河期なんて言い訳に過ぎないのだ。本当は自分の実力のなさも情けなさも全て分かっていた、ただの"言い訳"と言う鎮痛剤に縋り切っていただけだった。
最後のダンジョンで活躍できるかも!なんて淡い期待がこの時打ち砕かれたのだった。
「技能のnothingって間違いじゃなかったかもな……。」
俺はそう苦しく笑った。
「帰るか……。」
そうして俺は帰路へと着いたのだった。
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